芦ノ湖西岸歩道

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

西岸の森の向こうに、富士山が顔を出す今回のお題は、富士山が顔を出しているその下だ。これじゃどこだか分かりませんな。
写真ではたいてい、このような構図が多い。「芦ノ湖は、こういう場所だ」というイメージは強烈だ。
神社の鳥居、湖水、そして富士山

しかし、向こう岸=西岸の景色は見慣れない。いや、芦ノ湖に行けばみんな見ているはずなのだが、気にとめられることはまれである。最初のカットとこのカットは、道の駅箱根峠から、経路を「偵察」している写真である。
西岸には建造物が見られない

芦ノ湖西岸では何が見られるのか?それは美しい森林である。『かながわの美林50選』にもなっている「芦ノ湖西岸のスギ・ヒノキ林」はまさにここである。
かながわの美林50選の標柱が建つ
針葉樹林
いい緑がたくさんある

杉や檜だけではなくて、広葉樹もある。「道の駅箱根峠」からの写真でもなんとなく分かるように、湖岸は広葉樹の森で、そこから稜線に向かい針葉樹林が広がっている。
広葉樹のなかの道
苔生した広葉樹の倒木があったり

新鮮なアングルから神社の鳥居を眺められるのもいい。
鳥居を対岸から

そして、あちこちで湖岸に下りられる。歩く人は少ないので、プライベートビーチさながらだったり。このカットはほぼ中間地点の真田浜。
誰もいない湖岸
真田浜から駒ヶ岳を背景に、ザ・プリンス箱根芦ノ湖と海賊船のツーショット。広報写真ではまずあり得ない組み合わせである。箱根は昔から魅力的なディスティネーションで、かつては箱根山戦争っていう壮絶な争いが繰り広げられた。いまだに媒体社にはなにかを忖度する気持ちが生じるのか、西武系と小田急系の施設をいっしょに写し込むことは滅多にない。
駒ヶ岳、プリンスホテル、海賊船を一望
なお、芦ノ湖は遊泳禁止である。浜で水遊びぐらいはできるが、急に深くなっていて、かつ深みでは水温も低くなるらしい。
そして、このサイトのほかのページでは滝やら渓流やら、いろいろと水辺の記事を掲載しているが、それらに比べてしまうと、芦ノ湖の水はきれいとは言い難い。湖岸がこれだけ開発されていれば、仕方のないことである。

このあたりでは古くから林業がおこなわれてきた。昭和5年の北伊豆地震では、林業に携わる人たちが犠牲になった。宿舎のあったところに慰霊碑が建っている。
北伊豆地震の慰霊碑がひっそり
例によって、看板の写真を載せて説明を端折る。
北伊豆地震の説明案内

さて、経路はこのような感じだ。南側は駅伝の往路ゴール/復路スタート地点の奥に、北側は桃源台駅の近くに駐車場がある。ありがたいことに、どちらも無料だ。どちらから歩くにしても、帰りは船に乗るのがいいだろう。東岸も歩いて芦ノ湖を一周すれば達成感があるかもしれないが、時間がかかる。夏場には早朝から歩き始めたとしても、後半は暑い時間帯にかかってしまう。さらに、東岸は車道を歩く区間も多くて、あんまり惹かれないのである。
経路は10km以上になるが、半分以上は林道として整備されていて、歩きやすい。細かいアップダウンはあっても山登りをするわけではないから、誰が歩いても正味3時間半といったところだ(休憩時間は上乗せしてお考えいただきたい)

経路には地図の看板が要所要所に立っている。現在地は黄色く塗りつぶされている。
ルートの説明看板

湖面まで、いくらか高度感のあるところもある。歩道はよく整備されていて、取り立てて危険なところはないが、落っこちればケガはするので注意されたし。いささか危なっかしいのは、立岩と小杉ノ鼻の間である。
湖面まで高度感のある経路も
湖面を見下ろす
笹が茂っているところも。危険ではないけれど、長袖で行くのがいい。
笹が茂る小道

経路の北側では、深良水門を経由する。そして北側のスタート/ゴールは湖尻水門だ。
樹林越しに深良水門が見える
湖尻水門を遠望

平日だったこともあるが、途中で見かけたハイカーはたった5人だった。小田急系、西武系ともに施設も充実していて、人出が多い東岸とは別世界である。
地形的に西岸では富士山が見えるポイントは限られてしまう。だから、大々的な観光開発はされずにすんだのであろう。しかし「手つかずの自然」というわけではなく、長年手入れされてきた森林が広がり、深良水門のような施設もある。そこにあるのは、人の手で整えられた、自然の美しさである。芦ノ湖の西岸は箱根の楽しみ方を広げてくれるスポットだ。
木々の向こうに富士山