ボンネットバスのシャシはそのままに、車体だけ前に延長して室内容積を拡張したのがキャブオーバーバスである。
ボンネットバスに比べ室内は広くなるものの、巨大なエンジンが車内前方に鎮座しているため前ドアの設置が困難であり、都市における趨勢であったワンマン運行への対応が難しかった。客室にはエンジン音がこもりやすく、快適性が求められる長距離バスでの使用にも難があった。日本や欧米ではリアエンジンバスに置き換えられ、このタイプのバスが主流になった期間はごく短かった。
いっぽう、整備性がよいことから、発展途上国では長く使われた。中華人民共和国でも、前世紀終わりまでバスといえばこのタイプが主流であった。
撮影:1987年8月 撮影地:新疆ウイグル自治区、中華人民共和国
余談ではあるが、注目すべきは前輪の輪留めだ。下り勾配に駐車中で、前方だけに輪留めがされている。発進時は輪留めを外したのちハンドブレーキ緩解、惰性でスピードが乗ったところで3速あたりにギアを投入してエンジン始動、という運転方法であった。そのため、極力坂の下り方向に向かって駐車した。じつはこのバスの進行方向は画面左方向なのだが、休憩時はUターンして坂の下に車体を向けて駐車した。
撮影:1987年8月 撮影地:新疆ウイグル自治区、中華人民共和国
撮影:1991年8月 撮影地:チベット自治区、中華人民共和国
撮影:1990年8月 撮影地:雲南省麗江市、中華人民共和国
撮影:1990年7月 撮影地:蘇州市、中華人民共和国
撮影:1991年8月 撮影地:チベット自治区、中華人民共和国