横着園芸

ソラマメ

ソラマメの実が付く様子
名前のとおり空を向いて実が付くぞ

平和的な豆類

家庭菜園における豆類の王者―それは言うまでもなく枝豆だ。家庭菜園中級者以上であれば、まず間違いなく栽培した経験があるはずだ。

豆類は鮮度が落ちると食味が大きく損なわれてしまう。庭先で穫れたての豆なら、市販品を格段に上回る食味を期待できる。枝豆ももちろんそうである。しかしながら、枝豆という作物は思いもよらぬ災いを招きかねない。

枝豆は、ビールをがぶ飲みしながら手を休めることなく食べるべきものという点にその災禍の原因が求められる。夏の家庭菜園は、やんごとなき方のお屋敷でもない限り大変狭隘だ。余分な作物を育てる余地は残されていない。ところが、「枝豆を手を休めることなく食べる」ためには、まとまったスペースで栽培し、収量を拡大する必要がある。

スーパーで何げなく売られている枝豆1袋は、おおむね1株分である。すなわち、1株を収穫しないと、つまみとして十分な量には達しないということだ。しかも、家庭菜園で栽培する場合には、1株全体が食べごろになるという都合のいい生育は期待しないほうがよかろう。食べごろになったサヤだけを収穫して食べるという方法になることを覚悟しなければならない。

その際、生じがちな紛争はこのようなものだ。枝豆が10サヤ収穫できたとして、これをどのように分配するかである。サヤ1つに入っている豆の数も、おそらく均一ではない。うっかり枝豆を栽培してしまったために、骨肉の争いが生じる可能性をはらんでいるのだ。そもそも、わずかな枝豆を分け合って食べるという食卓は、あまりにももの悲しい。

さらに、旬の時季には値崩れが激しく、家庭菜園の採算を悪化させる恐れがある。自家栽培などせずにスーパーで買ってきたほうが要らぬ争いも生じないうえ、コストの面でも有利であろう。

そこで弊サイトでは、豆類としてはより平和的なソラマメを推奨する。ソラマメの枝豆に対する優位点は以下のようにまとめられる。

植え付け場所

直近に豆類を栽培した場所では極度に生育が悪くなる。これはソラマメに限らず、豆類に共通して当てはまる。弊サイトではグランドカバーとしてレンゲソウクローバーを推奨しているが、これらの植物もまたマメ科植物であるため、注意が必要になる。ほかの豆類やソラマメを繰り返し栽培する場合、最低でも隔年、できれば中2年の間隔を空けたいところだ。

冬場はなかなか生育が進まないが、春先に気温が上昇してくると一気に大型化する。後述する栽培上の課題もあるから、夏にニガウリやキュウリ、トマトを栽培したスペースに植え付けろ

なお、プランターでの栽培も十分可能だが、できるだけ大型のものにしろ。

苗か種か

苗、ともに入手は容易である。種といっても1袋に入っているのは10粒程度であり、持て余す心配はない。

木の実やほかの植物の種などが充実した秋の種まきであるため、春に種をまく枝豆と違いハトによる種の盗難の可能性も低い。また、発芽させるのは比較的容易だ。苗ならば手間を省くことができるが、コストの点では種のほうがいくぶん優位であろう。

発芽しすぎて余った苗は捨ててしまってもかまわないが、近所に「おすそ分け」してあげれば、少しは「いい男」になれるだろう。

育て方

土はなんでもいい。買うならいちばん安い園芸用土で十分だ。地植えなら根が張りやすいようによく耕しておけ。

肥料は不要だ。マメ科植物は進化しているからな。勘違いして窒素分が多い肥料を施したりする情弱がいるが、かえって生育が悪くなるぞ。

冬の間はメンテナンスフリーだ。デカくなることもなければ、虫に食われることもない。

春一番に備えろ

春先になると急激に株が大型化する。大型化した株が強風に遭うと、すべての手間と投じた費用が無駄になる。春一番への対策はソラマメ栽培の要諦であろう。対策は下記の2点だ。

  1. 株元に土を盛れ。
  2. ビニールひもで支柱にぐるんぐるん固定しろ。

どうだ?これで「ニガウリやキュウリ、トマトを栽培したスペースに植え付けろ」と言った意味が分かったな。そういう場所ならすでに支柱やネットが設置されているからな。

株元に土を盛るのは株を安定させるためだ。土はなんでもいい。買うならいちばん安い園芸用土で十分だ。

朝顔支柱も悪くないぞ。時季もかぶらないから有効活用できる。

暖かくなってくると葉にはアブラムシがたかる。ほとんどの場合、実には被害がないから放置しろ。むしろ、夏の家庭菜園に備えてテントウムシを招致することができる。

ソラマメにたかるアブラムシめがけてテントウムシが集まる

どうしてもアブラムシが嫌な場合

市場に出すわけじゃないんだから、放っておけばいいんだと言っているのだが、どうしてもアブラムシが嫌だという意見も少なくない。じょうろで水をジャバジャバかける、使い古しの歯ブラシでアブラムシを虐待するなどの方法が一般的だが、あまりにも手間がかかる。

「横着園芸」らしいソリューションは、蚊取り線香である。アブラムシは案外ヤワな生き物だ。蚊取り線香の煙で、あっさりお陀仏である。

気をつけなければならないのは、蚊取り線香を焚くことで益虫までも遠ざけてしまうことだ。それを避けるためには、蚊取り線香は高濃度で、短時間だけ使用するように工夫することであろう。


短時間で、煙モクモクが肝要。このように、両側から火を付けて、短時間で煙が回るように工夫する。

それでもまだ減らないという場合には、アブラムシのたかっている先っちょを丸ごと処分してしてしまう。アブラムシがたかるのは、主として先端の柔らかい部分だ。たかっているアブラムシもろとも切り落として、捨ててしまえ。生育に大きな影響が及ぶことはない。


たかっているアブラムシごと枝先を切断。

収穫

ソラマメのサヤは分厚くでかい。中でコソコソ何をやっているかわからない連中だ。収穫のタイミングの見極めは、初心者には困難かもしれない。

下の写真を参考にしろ。1円硬貨の直径は2cmだ。

だんだんサヤの筋の色が濃くなってくる

上の写真のとき、中のマメはこの状態。あと1週間程度で食べごろになるだろう。

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