自然の地形と人工の構造物を組み合わせ、まっすぐ流れていた河川をジグザグに流れるよう「改造」した。氾濫を繰り返してきた酒匂川に対する人類の叡智が、文命堤に集結されている。
県道720号線の酒匂川沿いにある駐車スペースに車を止めて探索するのが便利だ。駐車スペースは文命東堤の上にあるといってよい。
まずは県西土木事務所が設置している「酒匂川治水史探訪マップ」で予習する。マップは駐車スペースからすぐの大口土手(文命東堤)と、岩流瀬橋のたもとに設置されている。
河川敷に下りて、上流側の新大口橋を見る。橋の奥が最初の写真の千貫岩だ。酒匂川はこの自然の岩に当たるように誘導され、急カーブしてくる。
河川敷を引いて撮影。左側が大口土手(文命東堤)である。
護岸は近年整備されたものだが、堤防は昔からある。常に手を入れられ、治水の役にたち続けている。
文命堤鎮護のために創建された神社である、福澤神社に立ち寄ってみる。境内の入口に文命堤に関する石造物が集まる。
新大口橋から大口土手、福澤神社を振り返る。厳重に補強されているあたりが何度も決壊を繰り返してきた地点らしい。
新大口橋のたもとには箱根ジオパーク推進協議会が設置した案内板がある。直線的な流路を付け替えた仕掛けが分かりやすい。
上流の岩流瀬橋まで県道を歩く。「岩流瀬」というのは県内でも屈指の難読地名だろう。あまりにも読みにくいからか、バス停は平仮名で「がら瀬」となっている。「がらぜ」と「がらせ」も混在しているようだが、弊サイトでは南足柄市のページにならい「がらぜ」を採用した。
岩流瀬橋から下流側の眺め。左に岩流瀬土手(文命西堤)、川が突き当たるあたりが千貫岩だ。
そして岩流瀬橋から上流側。右側から上流に続くあたりが釜淵だ。平成25年度に急傾斜地崩壊対策工事として奥に見える法枠工が完成している。
岩流瀬橋のやや上流に文命西堤碑がある。石碑の写真を並べるのはあんまり好みではないが、この記事に関しては別だ。
「田中丘隅」の名前が読み取れる。
文命西堤碑から上流に向け川沿いに道が付けられている。法枠工の工事のために整備されたようだ。法枠工の下あたりからは、対岸の春日森土手を見渡せる。春日森土手で制御された酒匂川の流れは手前の釜淵にぶつかり、千貫岩よりもさらに急なカーブを描いている。