- アクセス難度
- 装備:トレッキング
- 道路:通常
- 交通機関:あり
- 行動:30/100(登山道、急峻、徒歩2時間以上)
明治20(1887)年、ここから横浜への給水が始まった。神奈川県の水利用の歴史では、エポックメイキングな施設である。しかし、水需要の増大は急激だった。わずかな期間で青山取水口ならびに青山沈殿池に役目を譲ることになってしまった。
経緯については横浜市水道局の解説を参照。
沈澄池の跡は今でも目にすることができる。意外なとにポンプで川から水をくみ上げていたので、沈澄池はやや高いところにある。そのほかの施設は沈殿池よりも一段下にあり、昭和40年に竣工した城山ダムにより形成された津久井湖に沈んでしまった。
しかし、ダムは洪水のおそれがある夏の間、通常の水位の75~80%を満水として運用される。その期間には、普段は水に沈んでいるものを目にすることができるのだ。神奈川県内のダムでは6月後半から10月前半までがそれにあたる。
というわけで、洪水期貯水池運用が終わる前の9月の末に、三井用水取入所跡を訪問した。
経路は往復5.2km。探索には約2時間を要した。最低地点は標高124mの湖岸、最高地点は215mで、累積標高差は登り下りともおよそ210mであった。
経路の約半分は舗装された道路である。絶対的な歩く距離は短いので重装備は不要だが、用意したいものは下記。
- 長袖の服
- 軍手
- 軽登山靴
- 登山杖(本来の目的とは違う使い方をする)
- 心配性の方はヘルメット
脅かすわけではありませんが、大雨の前後には絶対近づいてはいけません。石の殺傷能力を侮ってはいけない。人類史において、投石によって命を落とした者は数知れない。近代兵器の犠牲者を凌駕するかもしれない。平時における難易度は低い行程ではあるが、石が落ちてくるおそれのあるときは避けるべきである。
クルマは津久井又野公園の駐車場に停められる。無料である。確認はしていないが、公園の開園時間が8:00から22:00なので、駐車場の利用もこの時間帯に限られるかもしれない。
この駐車場は沼本ダムを対岸から見るときにも利用できる。
まずは名手橋というつり橋を渡る。重さ6トンまでの制限はあるが、自動車も通行できる立派な橋である。
橋を渡り集落の中、坂を登っていく。長閑な里山という感じで、天気と季節がよければきっときれいだ
この集落までクルマで乗りつけられれば時間の節約になりそうだが、駐車できそうなスペースはない。道路の幅員には余裕があるが、8:00から20:00までは駐車禁止である。
進路の左側、この「路地」のような道に入る。標識はないものの、路面にペイントされているように県道515号線である。
ゲートの直後ではバリケードというか、柵のようなものに行く手を阻まれるが、右側のすき間から向こう側に抜ける。
森林整備にはもちろん協力させていただく心積もりである。
バリケードから数分で、派手に崖が崩れている。このようなところを通過するので、心配性の方にはヘルメットが必要になる。
土砂崩れよりも実務的に困るのはこのように草むしてしまった区間である。草があちこち当たるので、長袖長ズボンが必須となる。また、夏場など温暖な季節にはマムシが登場するおそれがあるから、足元には十分注意して通行する必要がある。
県道としては通行止めになって久しいが、カーブミラーも残る。比較的コンディションのよい区間でも道幅は狭いことが分かる。
幅広く肥満した最近の自動車では、整備がおこなわれていたとしても通行は難しい。5ナンバーや軽自動車の規格は、日本の道路事情に適合したものであることがよく分かる。
石が落ちているのは一カ所だけではない。ガードレールでかろうじて踏みとどまっている巨石。
話を面白くするために選んだ画像を並べたが、道中はそれほど大変というわけもはない。石の直撃さえ食らわなければ、だが。
県内の山のあちこちで見かける「水源の森林」の標柱はここにもある。
近くには送電鉄塔が建っているので、東京電力の管理通路が交差している。
津久井又野公園から30分強。いよいよ目的地の三井用水取入所跡は近い。なにか看板のようなものが建てられている。
ここから、湖岸の三井用水取入所跡に向けて下降していく。標高ほぼ200mのこの地点から、124mの湖岸まで、一気に下っていく。
自動車で資材を搬入できない山中にもかかわらず、通路はよく整備されている。
しかしながら、訪れる人は決して多くなさそうだ。草木が茂っていたり、クモの巣が盛大に張っているところもある。草やクモの巣を振り払いながらこのような地点を通過する際に、登山杖が役に立つ。
通路はよく整備されているが、風雨にさらされて踏み板が怪しくなっているところもある。左右の支柱につかまって慎重に下降する。このとき軍手が必要になる。
冒頭の写真の沈殿池跡まで降りてきた。最初の写真は盛り土された上に敷かれた緑色のシートから右手方向を撮影したもの。
なにかしら資料として役立つかもしれないので、左手方向、沈殿池の下流側も撮影。
湖岸側から陸側を見る。沈殿池は降りてきた階段と看板の間を横方向に延びている。
看板からさらに、湖岸方向に下りる。この地点は水位の高い季節には水没してしまうだろう。
ここでも登山杖の出番となる。足元は安定しておらず、つついて確認しながら進む。草木を払いのけるのも素手では大変なので、登山杖のような棒状のものがあると便利だ。万が一マムシと遭遇した際には兵器として役立つかもしれない。
建物の基礎だろうか。奥には沼本ダムが見えてきた。
「かたまり」で残っているレンガもある。その上方の水中にも、何かの遺構が沈んでいるのが見える。
この日到達できたギリギリの地点。沼本ダムの手前のこのあたりの水中に、取水施設があったと思われる。その後、水位が低くなった日を狙い再訪を果たした。
なお、2016年6月に沼本ダムの撮影に行った際、対岸からこの三井用水取入所跡のあたりを撮影したのが以下の写真である。水位はもう少し高かったようだが、この記事で紹介したものも写っている。
三井用水取入所跡は沼本ダムの右側に続くあたりだ。